アトピー性皮膚炎と漢方基礎理論
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アトピー性皮膚炎と漢方基礎理論

(キーワード:脾肺病および脾肺腎病)

 アトピー性皮膚炎と言っても、中医学的には特別視する必要はなく、中医基礎理論にもとづく理詰めの弁証論治こそが、 何をさておいても重要課題です。
 やや専門的になりすぎるきらいはありますが、とても重要なことですので、村田恭介著による過去の専門的な拙論 脾肺病としてのアトピー性皮膚炎(1996年:東洋学術出版社発行の『アトピー性皮膚炎の漢方治療』に掲載。)におけるもっとも重要な個所を引用して御紹介しておきます。

東洋学術出版社発行の『アトピー性皮膚炎の漢方治療』に掲載。
 1996年の発行

 アトピー性皮膚炎は,現象的には皮膚と皮下組織の病変であり,中医学的には肺に属する「皮毛」と脾に属する「肌肉」の病変であるから,アトピー性皮膚炎は脾肺病と考えることが出来る。それゆえ,大気汚染の状況や空調設備の環境および食生活の習慣や環境などと,密接な関係がある。

 ところで,『素問』咳論に「五臓六腑はみな人をして咳せしむ。独り肺のみにあらざるなり」と述べられているように,五臓の機能が失調すると少陽三焦を運行する気機の逆乱を誘発し,いずれも肺の宣降を失調させて咳嗽が出現し得ることを指摘しているが,アトピー性皮膚炎も同様に,五臓の病変が肺脾に波及すると,いずれもアトピー性皮膚炎を誘発し得るのである。

 昨今のアトピー性皮膚炎には様々なタイプがあり,代表的な弁証分型を提示することは出来ても,すべてを包括することは不可能な状況である。
 肺脾の疾患であっても,五臓の病変はいずれも本病を誘発し得るだけに,病機は複雑多岐である。とは言え,これは何もアトピー性皮膚炎に限ったことではなく,大局的に見れば他の疾病と何ら異なることのない普遍的な共通性である。
 それゆえ,アトピー性皮膚炎だからと言って特別視する必要はなく,肺脾病との認識に立脚して中医学理論に基づく弁証論治を忠実に行うという基本的な営為こそが,最も有効な治療方法と言える筈である。

 人体の生命活動は「五行相関に基づく五臓を項とした五角形」が基本構造であり,病機分析(病態認識)の基礎理論となる構造法則の原理は,陰陽五行学説である。陰陽五行学説という原理に基づく中医学理論は,よりハイレベルな構造法則として常に発展していく必要があるが,差し当たりは現段階における中医学理論に基づき,五臓を項とする五角形のひずみを矯正することが,疾病治療の基本原則となる。  

 つまり,西都中医学院の陳潮祖教授が『中医病機治法学』(四川科学技術出版社発行)で述べられているように,五臓間における気・血・津液の生化と輸泄(生成・輸布・排泄)の連係に異常が発生し,これらの基礎物質の生化と輸泄に過不足が生じたときが病態であるから,五臓それぞれの生理機能の特性と五臓六腑に共通する「通」という性質に基づき,病機と治法を分析して施治を行うのである。

  1. 病因・病位・病性の三者を総合的に解明し,
  2. 気・血・津液の昇降出入と盈虚通滞の状況を捉え,
  3. 定位・定性・定量の三方面における病変の本質を把握する

というわけである。

 治療方法については、これらの病機分析に基づき,

  1. 病性の寒熱に対応した薬物を考慮しつつ,
  2. 発病原因を除去し,
  3. 臓腑の機能を調整し,
  4. 気血津精の疏通や補充を行うのである。

 治療の成否は,中医基礎理論の知識を実際の臨床にどのように活用し,応用出来るかという一事に関わっているが,実際の臨床においては「現症の病機」の把握に大きな間違いがなければ,アトピー性皮膚炎と言えども,既製のエキス剤の代用によっても,一定の成果を上げ得るのである。

—脾肺病としてのアトピー性皮膚炎


脾肺腎病としてのアトピー性皮膚炎

 しかしながら上記の陳潮祖理論に基づいて更に深く追究すれば、表面的には「脾肺病としてのアトピー性皮膚炎」ではあっても、遷延すると必ず腎に波及することを忘れてはなりません。
 「脾肺腎病としてのアトピー性皮膚炎」とした続編を予定していたほどですから、この点についての配慮も欠かせないわけです。

五行相関図(五臓六腑の連繋)

 つまり、あらゆる治療方法に抵抗して長引くアトピー性皮膚炎、とりわけステロイド外用薬を長期に亘って使用し続けているケースでは、 腎に波及していることが多いのです。
 一部に例外があるものの、六味丸系列の数ある種類の中から、いずれか一つを併用する必要が生じるのも、この理由からなのです。

 病歴がそれほど長くないケースや、たとえ病歴が長い場合でもステロイド外用薬の使用量がそれほど多くなかったケースでは腎への波及が少ない場合もあります。

 しかしながら、もともと腎陰虚の体質者こそアトピー体質であると推測できる部分もありますので、結果的にはほとんどのケースで六味丸系列のいずれかの方剤を基礎にする必要があるのが現実です。

参考文献:五臓の病変が腎に波及するしくみ←「五臓の損傷は極まると必ず腎に及ぶ」

 
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